【保存版】ロゴ制作を依頼する前に!商標・著作権トラブルを防ぐ7つの必須チェックリスト
そのロゴ、本当にあなたのものになりますか?デザイナーへの依頼で失敗しないための予防法務ガイド
目次
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ロゴは単なる絵ではない!デザイン発注前に潜む法的リスクとは
新しいビジネスの顔となるロゴのデザインを依頼する瞬間は、事業の船出を象徴する心躍る体験です。しかし、その創造的なプロセスの裏には、見過ごされがちな法的な落とし穴が潜んでいます。素晴らしいデザインが完成したにもかかわらず、法的な問題で使えなくなってしまっては、費やした時間も費用もすべて水の泡です。
時間とお金を無駄にしないための「予防法務」の重要性
ロゴ制作におけるトラブルは、完成後に発覚することがほとんどです。そうなれば、ロゴの修正や作り直しはもちろん、最悪の場合、事業名そのものの変更を余儀なくされる可能性もあります。こうした事態を避けるために不可欠なのが、デザインを発注する「前」の段階でリスクを洗い出し、対策を講じる「予防法務」の視点です。この一手間が、将来の大きな損失を防ぐ最も賢明な投資となります。
このチェックリストで回避できる3大トラブル(商標権侵害・著作権問題・登録拒絶)
この記事で紹介する7つのチェックリストは、起業家が直面しがちな「商標権侵害」「著作権問題」「商標登録の拒絶」という3つの大きなトラブルを回避するために設計されています。一つひとつ確認していくことで、安心してロゴ制作を進め、あなたのブランドを法的に強固なものにすることができます。
チェック1:その名前、本当に使える?J-PlatPatで先行商標を調査する
ロゴ制作の第一歩は、そのデザインの核となる「名前」や「コンセプト」が、すでに他人に権利として押さえられていないかを確認することです。この確認作業を「先行商標調査」と呼びます。
なぜデザイナーに依頼する「前」の調査が必須なのか
もし、先行商標調査をせずにロゴ制作を進め、完成後に類似の登録商標が見つかった場合、そのロゴは使用できず、デザイン費用は無駄になってしまいます。デザイナーに依頼する前に調査を行うことで、このような無駄なコストと時間の浪費を未然に防ぐことができます。これは、家を建てる前に土地の権利関係を確認するのと同じくらい基本的なステップです。
自分でできる!J-PlatPatを使った簡易調査の基本ステップ
特許庁が提供する無料のデータベース「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」を使えば、誰でも基本的な先行商標調査を行うことができます。まずは、登録したい名称(文字列)で検索してみましょう。完全一致だけでなく、「?」を組み合わせることで前方一致や後方一致の検索も可能です。また、ロゴのデザイン(図形)についても、類似のものがないか確認することが重要です。
⚠️ 注意:J-PlatPatは特許庁が提供する無料のデータベースで、基本的な商標調査が可能です。ただし、専門的な判断には限界があります。
「類似」の判断はプロの領域。調査の限界と専門家の価値
J-PlatPatでの調査は非常に有効ですが、注意点もあります。商標権の侵害は、全く同一のものだけでなく、「類似」していると判断された場合にも成立します。しかし、何をもって「類似」とするかの判断は、過去の判例や審査基準に関する深い知識を要するため、専門家でなければ極めて困難です。簡易調査で問題がなさそうに見えても、専門家である弁理士に最終的な判断を依頼することが、リスクを最小限に抑えるための賢明な選択です。
チェック2:そもそも商標登録できないロゴのデザインを避ける
せっかくロゴをデザインしても、法律上、商標として登録が認められないものが存在します。デザイン制作に着手する前に、どのようなロゴが登録できないのかを知っておくことで、手戻りを防ぐことができます。
参考情報:特許庁「出願しても登録にならない商標」
普通名称や地名など、識別力がないと判断されるケース
商標の役割は、自社の商品・サービスを他社のものと「識別」することにあります。そのため、単に商品やサービスの内容を説明するだけの言葉や、一般的な地名は、識別力がないと判断され、原則として登録できません。例えば、パン屋が「おいしいパン」という名称を、IT企業が「東京ソフトウェア」という名称を独占することは認められません。
❌ 登録できない例
- パン屋の「おいしいパン」
- IT企業の「東京ソフトウェア」
- 一般的な地名や商品名
ありふれた簡単な図形は登録できない
円、三角形、四角形といった、極めて簡単で誰もが使うような図形だけでは、特定の事業者のマークとして識別することが難しいため、商標として登録することはできません。もちろん、これらの図形を独創的に組み合わせたり、デザイン化したりすることで、登録の可能性は生まれます。
他社の著名なロゴを連想させるデザインのリスク
他人の広く知られた商標と紛らわしいロゴや、他社のブランドを連想させるようなデザインは、消費者に混乱を与える可能性があるため登録できません。意図的でなくとも、結果的に似てしまった場合も同様です。デザインのオリジナリティを追求することが、結果的に法的なリスクを回避することに繋がります。
チェック3:ロゴの「著作権」は誰のもの?デザイナーとの認識を合わせる
ロゴ制作を外部のデザイナーに依頼する際、最も見落とされがちで、かつ深刻なトラブルに発展しやすいのが「著作権」の問題です。多くの人が「お金を払ったのだから、ロゴの権利は当然自分のものになる」と考えがちですが、法律上の扱いは異なります。
原則として著作権は制作者(デザイナー)に帰属する
日本の著作権法では、創作物が生み出された瞬間に、その権利は制作者(この場合はデザイナー)に自動的に発生します(発生主義)。つまり、特別な契約を交わさない限り、たとえ制作費を支払ったとしても、完成したロゴの著作権はデザイナーが保持し続けることになるのです。
⚠️ 重要:制作費を支払っても、契約がなければ著作権はデザイナーに残ります。
商標登録を検討していることを事前に伝える重要性
著作権がデザイナーに残ったままだと、発注者はそのロゴを自由に使用することはできず、商標として登録したりすることにリスクが発生する可能性があります。そのため、ロゴ制作を発注する段階で、将来的に商標登録を検討していることをデザイナーに明確に伝え、権利関係について合意しておくことが極めて重要です。
ロゴの改変や自由な利用にはデザイナーの許諾が必要になる
著作権がデザイナーにある状態では、例えば「ロゴの色を少し変えたい」「配置を調整したい」といった軽微な改変でさえ、著作権の一部である「同一性保持権」を侵害する可能性があります。事業の成長に合わせてロゴを柔軟に活用していくためにも、権利関係をクリアにしておく必要があります。
チェック4:最も重要!「著作権譲渡契約書」を必ず書面で締結する
デザイナーとの良好な関係を維持し、将来のトラブルを確実に防ぐために、ロゴの権利を正式に譲り受けるための「著作権譲渡契約書」を書面で締結しましょう。これは、ロゴ制作依頼における最も重要なステップと言っても過言ではありません。
なぜ口約束は危険?契約書がない場合の将来的なリスク
口約束やメールでの簡単な合意だけでは、後になって「言った」「言わない」の水掛け論になりかねません。事業が成功し、ロゴの価値が高まった後で、デザイナーから権利を主張されたり、追加の利用料を請求されたりするリスクも考えられます。書面による契約は、双方の合意内容を明確にし、お互いを守るためのものです。
📋 口約束のリスク
- 「言った」「言わない」の水掛け論
- 後から権利を主張される可能性
- 追加の利用料請求のリスク
契約書に必ず含めるべき重要条項とは(著作権法第27条・第28条)
著作権譲渡契約書を締結する際には、単に「著作権を譲渡する」と記載するだけでは不十分です。特に重要なのが、著作権法第27条(翻訳権、翻案権等)および第28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)に定められた権利も譲渡対象に含めることを明記する点です。この一文がないと、ロゴを元にしたキャラクターグッズの作成など、二次的な利用の権利がデザイナー側に残ってしまう可能性があります。
著作者人格権の不行使特約も忘れずに
著作権とは別に、制作者には「著作者人格権」という一身専属の権利があり、これは譲渡することができません。この権利には、作品を勝手に改変されない「同一性保持権」などが含まれます。そのため、契約書には「著作者人格権を行使しない」という趣旨の条項(不行使特約)を加えてもらうことが、ロゴを事業で自由に活用するために重要となります。
チェック5:使用フォントや素材のライセンスを確認する
ロゴは、文字(フォント)や図形(素材)の組み合わせで構成されています。これらの構成要素一つひとつにライセンスが存在し、その利用規約に違反すると、思わぬトラブルに繋がる可能性があります。
商用利用不可のフォントを使っていないか
世の中には多種多様なフォントが存在しますが、その中には個人利用は無料でも、ロゴとしての利用や商用利用には別途ライセンス料が必要なものや、そもそも商標登録が禁止されているものがあります。デザイナーに依頼する際は、使用するフォントのライセンスが商標登録に対応しているかを確認してもらうようにしましょう。
⚠️ 注意:個人利用無料でも、商用利用や商標登録には別途ライセンスが必要なフォントが多数存在します。
Canvaなどのストック素材で作成したロゴは商標登録できない
Canvaのようなデザインプラットフォームで提供されているテンプレートやイラスト(ストック素材)は、多くのユーザーが利用できるよう「非独占的」なライセンスが付与されています。誰もが使える素材で構成されたロゴは、自社の商品・サービスを他と区別する「識別力」を持たないため、原則として商標登録することはできません。
❌ 商標登録できない素材
- Canvaのテンプレート
- ストックイラスト素材
- 非独占的ライセンスの素材全般
デザイナーに素材のオリジナリティとライセンスを保証してもらう
安心してロゴを使用するためには、デザイナーとの契約書に「納品されるロゴが第三者の権利を侵害していないこと」を保証する条項(表明保証条項)を盛り込むことが有効です。これにより、万が一、使用された素材が原因で権利侵害問題が発生した場合でも、責任の所在を明確にすることができます。
チェック6:商標戦略を考える|守りたいのは「名前」か「デザイン」か
商標登録と一言で言っても、その登録方法にはいくつかの戦略があります。限られた予算の中で最大限の保護効果を得るためには、自社のブランドにとって何が最も重要かを見極める必要があります。
文字商標とロゴ商標の違いとそれぞれの保護範囲
商標登録には、主に特許庁が定めた標準的な書体で「文字そのもの」を保護する「文字商標(標準文字商標)」と、デザイン化されたロゴの「見た目」を保護する「ロゴ商標(図形商標)」があります。文字商標は、ロゴデザインを変更しても権利が維持される柔軟性がある一方、ロゴ商標はデザインの模倣を防ぐのに有効です。
2つの商標タイプ
文字商標:名称そのものを保護。デザイン変更に柔軟
ロゴ商標:デザインの見た目を保護。模倣防止に有効
事業フェーズに合わせた戦略の立て方(両方登録すべき?)
最も強固な保護を得るためには、文字商標とロゴ商標の両方を別々に登録するのが理想ですが、その分費用も2倍かかります。そのため、創業初期の段階では、まずブランドの根幹である「名称」を文字商標で押さえ、事業が軌道に乗った段階で、確定したロゴデザインをロゴ商標として追加で登録するといった段階的な戦略も有効です。
まとめ:法的チェックをクリアして、安心してロゴ制作を進めよう
ロゴ制作は、単に美しいデザインを生み出すだけの作業ではありません。将来の事業を守るための法的な基盤を築く重要なプロセスです。デザイナーに依頼する前に、今回ご紹介したチェックリストを活用し、一つひとつのリスクを丁寧に取り除いていきましょう。
7つのチェックリストおさらい
- J-PlatPatで先行商標を調査する
- 商標登録できないデザインを避ける
- ロゴの著作権の帰属についてデザイナーと合意する
- 書面で「著作権譲渡契約書」を締結する
- 使用フォントや素材のライセンスを確認する
- 守りたいのは「名前」か「デザイン」か、商標戦略を考える
- (最終チェック)専門家への相談を検討する
専門家への相談でリスクを最小化する(ワンストップサービスの活用)
これらのチェック項目は専門的な判断を要する部分も多く、すべてを自社だけで完璧に行うのは困難かもしれません。そのような場合は、商標の専門家である弁理士に相談することをお勧めします。特に、ロゴ制作の段階から弁理士が関与する「ワンストップサービス」を利用すれば、デザインと法務の両面から最適なロゴを効率的に制作し、権利化までスムーズに進めることが可能です。




