【緊急】商標権侵害の警告書が届いた!無視は絶対NG?正しい対応手順と解決までの全フロー
訴訟リスクを回避し、自社のビジネスとブランドを守るための初動対応・実務的判断基準マニュアル
目次
目次
パニック厳禁!警告書が届いた直後にやるべき「3つの初動」
ある日突然、弁護士事務所や特許事務所の封筒が会社や自宅に届き、中を開けると「商標権侵害」「損害賠償」「即刻の使用中止」といった威圧的な言葉が並んでいる。これは経営者や担当者にとって、心臓が止まるような思いをする瞬間でしょう。しかし、ここで最も重要なことは、冷静さを取り戻すことです。警告書はあくまで相手方の一方的な主張を記した書面であり、その時点で裁判所の判決が下ったわけではありません。対応を間違えなければ、多くのケースで穏便な解決が可能です。ここでは、警告書を受け取った直後に取るべき、致命的なミスを防ぐための3つの初動について詳述します。
①【鉄則】絶対に無視しない・その場で慌てて謝罪しない
警告書、特に内容証明郵便で届いた書面に対して、最もやってはいけない対応が「無視」です。恐怖のあまり見なかったことにしたい心理は理解できますが、放置は法的に極めて不利な状況を招きます。無視を続けることは、後に訴訟へ発展した際、「権利侵害を認識しながら放置した(悪意がある)」と裁判官に心証を与える材料となり、損害賠償額が増額される要因になりかねません。
また、無視とは逆に、慌てて相手に連絡を取り、謝罪してしまうことも避けるべきです。電話で「すみませんでした、すぐに辞めます」と伝えてしまうと、その発言が録音されていた場合、法的に「自らが権利侵害をしていたことを認めた」という自白の証拠として扱われるリスクがあります。
理想的な初期回答(プロトコル)
最初の対応は、相手の主張を認めることも否定することもせず、あくまで事務的に行うのが鉄則です。「書面を受領しました。現在、事実関係を調査中ですので、〇月〇日までに回答いたします」といった内容を、書面またはメールで伝えるだけに留めてください。これにより、相手に対して「誠実に対応する意思がある」ことを示しつつ、自社の防御体制を整える時間を稼ぐことができます。
② 相手の「商標権」を精密検査する(J-PlatPat活用法)
相手が「商標権を持っている」と主張していても、その権利が現在も有効であるか、あるいは本当に貴社のビジネスに抵触しているかは別問題です。専門家に相談する前に、まずはご自身で事実確認を行うことが可能です。独立行政法人工業所有権情報・研修館が提供している「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を使用し、相手の権利状況を精密に検査します。
J-PlatPatでの確認手順とチェックポイント
まず、警告書に記載されている「登録番号(第〇〇〇〇〇〇号)」を確認し、J-PlatPatの「商標検索」に入力します。ここで確認すべき重要事項は以下の通りです。
第一に、存続期間の確認です。商標権は10年ごとに更新が必要ですが、相手が更新手続きを忘れており、権利が消滅しているケースが稀にあります。権利が切れていれば、その警告には法的根拠がないことになります。
第二に、権利者の確認です。警告書の差出人と、登録原簿上の権利者が一致しているかを確認します。もし違っていれば、差出人にはそもそも警告する権限がない可能性があります。
第三に、指定商品・役務(サービス)の確認です。商標権は、登録された特定のジャンル(区分)においてのみ効力を発揮します。例えば、相手が「飲食店」で商標を持っていても、貴社が「Webアプリ開発」で同じ名前を使っている場合、区分が異なるため侵害にはならない可能性が高まります。
③ 自社の「使用実績」と証拠を時系列で保全する
相手の権利を確認したら、次は自社の防御材料を集めます。商標法には「先使用権」という制度があり、相手が商標出願をする前から、貴社がその名称を広く認識される形で使用していた場合、継続して使用する権利が認められることがあります。
集めるべき証拠資料の具体例
いつからその名称を使っていたかを客観的に証明できる資料を、可能な限り多く集めてください。具体的には、日付が入った過去のカタログやパンフレット、Webサイトの公開履歴(ログデータ)、その名称が記載された過去の請求書や納品書、広告出稿の記録などが該当します。特に、相手の商標出願日(登録日ではなく出願日が基準となります)より前に使用していた事実は、後の交渉において最強の武器となります。これらの証拠は、散逸しないよう直ちにデジタルデータ化し、保全しておくことを強く推奨します。
警告書の中身を正しく読む:相手の本気度と要求を見極める
届いた封筒を開け、警告文に目を通す際は、感情的にならずに「相手が誰で、何を求めているか」を分析的な視点で読み解く必要があります。警告書の文面には、相手の本気度や、こちらの対応によって事態がどう転ぶかのヒントが隠されています。ここでは、警告書の構成要素からリスクレベルを判定する方法を解説します。
差出人は誰か?(弁護士・弁理士 vs 本人)
まず確認すべきは、差出人の名義です。ここに誰の名前があるかによって、事態の深刻度が大きく異なります。
代理人(弁護士・弁理士)がついている場合
差出人に「代理人 弁護士 〇〇」「代理人 弁理士 〇〇」と記載がある場合、警戒レベルは最大です。相手はすでにお金を払って専門家に依頼しており、法的な勝ち目があると判断した上で警告を送ってきています。この場合、相手は訴訟も辞さない構えである可能性が高く、素人判断での反論は極めて危険です。こちらも同等の専門家を立てて対応する必要があります。
権利者本人(社長や個人名)の場合
代理人がついておらず、会社名や個人名で送られてきている場合、相手が法的な誤解をしている可能性や、単に「自社の名前を使われているのが気に入らない」という感情的な理由で送っている可能性があります。もちろん油断は禁物ですが、代理人がついている場合に比べれば、話し合いによる柔軟な解決の余地が残されていることが多いと言えます。
具体的な要求内容は何か?(差止・廃棄・損害賠償)
警告書には必ず「要求事項」が記載されています。相手が何をゴールにしているのかを正確に把握しましょう。主な要求は以下のように分類されます。
| 要求内容 | 深刻度 | 説明 |
|---|---|---|
| 使用の即時中止 | 中 | 商標の使用をすぐに停止することを求める。ビジネスへの影響は大きいが、金銭要求がなければ交渉の余地あり。 |
| 在庫・看板の廃棄 | 高 | 既存の商品や販促物の破棄を要求。物理的な損失が発生するため、猶予期間の交渉が重要。 |
| 損害賠償請求 | 最高 | 過去の使用による損害の金銭賠償を要求。金額が高額になる可能性があり、法的対応が必須。 |
| 謝罪広告の掲載 | 中 | 公に謝罪を求める。企業イメージへの影響が大きいため、慎重な判断が必要。 |
回答期限は妥当か?
警告書には「本書面到達後、〇日以内に回答せよ」といった期限が切られていることが一般的です。しかし、この期限は相手が勝手に決めたものであり、法的な拘束力はありません。例えば「3日以内」など、物理的に調査や検討が不可能な短い期限が設定されている場合は、焦る必要はありません。
「専門家に相談し、事実関係を調査するため、回答期限を〇月〇日まで延長していただきたい」と連絡すれば、通常は認められます。ただし、無視をして期限を過ぎることは心証を悪化させるため、必ず延長の連絡を入れることがマナーであり戦略です。
出典: 内容証明郵便|日本郵便株式会社
本当に侵害?「商標権侵害」が法的に成立する3つの厳格な条件
警告書が届いたからといって、必ずしも貴社が商標権侵害をしているとは限りません。商標権侵害が成立するには、法律で定められた厳格な要件をすべて満たす必要があります。一般の方が陥りがちな「なんとなく似ているから侵害だ」という感覚論ではなく、法的なロジックに基づいた判断基準を解説します。この3つの条件のうち、1つでも欠ければ侵害は成立しません。
条件①:商標的行使(Trademark Use)であるか
最初の壁は、貴社のその言葉やマークの使い方が、そもそも「商標としての使用」にあたるかどうかです。これを「商標的行使」と呼びます。
記述的表示としての使用
商標法第26条では、商標権の効力が及ばない範囲が規定されています。例えば、商品そのものの品質、原材料、効能、産地などを普通に説明する文章の中でその言葉を使っている場合は、原則として商標権侵害にはなりません。
具体的な例を挙げると、誰かが「アップル」という商標をPC向けに登録していても、果物屋が「美味しいアップル(りんご)です」と説明書きをすることまで禁止することはできません。貴社の使用方法が、自社ブランドの識別マークとしてではなく、単なる説明文の一部であるならば、侵害を否定できる強力な根拠となります。
条件②:商標が「同一」または「類似」しているか
次に、相手の登録商標と貴社の商標が似ているかどうかの判断です。これを「類否判断」と言います。特許庁の審査基準では、以下の3つの要素を総合的に考慮して判断されます。
類否判断の3要素
第一は「外観(見た目)」です。文字のデザイン、書体、ロゴの形状が視覚的に似ているかどうかを見ます。
第二は「称呼(読み方)」です。口に出して読んだ時の音が似ているかどうかです。「LogoTokyo」と「LogoTokio」のように、一文字違いでも音がほぼ同じであれば類似とみなされる可能性が高くなります。
第三は「観念(意味)」です。言葉から想起される意味合いです。例えば、「キング」と「王様」は、文字も音も違いますが、意味が同じであるため、類似と判断されるケースがあります。
これら3つのうち、1つでも紛らわしいものがあれば、取引の実情を考慮しつつ、類似していると判断されるリスクがあります。
条件③:商品・サービス(区分)が「同一」または「類似」しているか
最後の条件は、商標を使用している商品やサービスが被っているかどうかです。商標権は、登録時に指定した「区分(カテゴリ)」の範囲内でのみ独占権が発生します。
類似群コードによる確認
名前が完全に一致していても、カテゴリが全く異なれば侵害にはなりません。例えば、「アサヒ」という商標は、ビール、靴、新聞社、自転車など、全く異なる分野で別の会社がそれぞれ権利を持っています。
実務的には、「類似群コード」という5桁の英数字のコードを使って判断します。J-PlatPatで相手の商標の類似群コードを確認し、貴社の商品・サービスのコードと一致するかどうかを確認します。ここが一致していなければ、原則として侵害にはなりません。
出典: 商標審査基準|特許庁
警告に対する回答方針の策定(戦うか、引くか、和解するか)
侵害の成否についてある程度の見通しがついたら、次は相手への回答方針を策定します。選択肢は大きく分けて「和解(Soft Landing)」か「徹底抗戦(Hard Fighting)」の2つです。自社のビジネスへの影響度と、勝訴の確率を天秤にかけて決定します。
パターンA:侵害を認めて「和解・ソフトランディング」を目指す
明らかに侵害しており、勝ち目がない場合、あるいは争うコスト(弁護士費用や時間)がもったいない場合は、早期解決を目指します。
在庫処分の猶予交渉(フェードアウト)
全面的に非を認めて謝罪しつつ、実利を取る交渉を行います。例えば、「侵害の事実は認めますが、故意ではありませんでした。現在ある在庫を廃棄すると経営に甚大なダメージがあるため、〇ヶ月かけて売り切ることを認めてほしい。その代わり、将来的な製造は一切行いません」といった条件闘争です。相手にとっても、裁判をして費用をかけるよりは、確実な使用中止を約束させた方がメリットがある場合が多く、この条件が通るケースは少なくありません。
ライセンス契約の締結
そのブランド名が自社ビジネスにとって不可欠な場合、「使用許諾(ライセンス)」を申し入れる方法があります。相手に対して使用料(ロイヤリティ)を支払う契約を結ぶことで、堂々と商標を使い続けることができます。これはピンチをビジネスパートナーシップに変えるポジティブな解決策となり得ます。
パターンB:侵害を否定して「徹底抗戦」する反論ロジック
侵害の事実がないと確信できる場合、または相手の商標権に瑕疵(欠陥)がある場合は、強気に反論します。
非類似の主張と無効審判の示唆
回答書において、「貴社の商標と弊社の商標は、外観・称呼・観念のいずれにおいても類似しておらず、侵害には当たらない」と論理的に反論します。さらに強力なカウンター攻撃として「無効審判」や「不使用取消審判」をちらつかせることがあります。「そもそも貴社の商標は、登録されるべきでないものが誤って登録されたものである(無効理由がある)」や「貴社はこの商標を3年以上使用していないため、取り消されるべきである」と主張し、相手の権利そのものを消滅させる手続きを行う構えを見せるのです。これにより、相手がリスクを恐れて警告を取り下げる(矛を収める)ことを狙います。
相手が「商標トロール(権利ゴロ)」の可能性がある場合
近年問題になっているのが、使用する意思がないのに商標を取得し、他社に警告書を送って不当な和解金をせしめようとする「商標トロール」です。
トロールへの対処法
相手がトロールである可能性が高い場合、安易に金銭要求に応じてはいけません。一度払うと「カモ」として認識され、さらなる要求を招く恐れがあります。この場合、弁護士や弁理士などの専門家名義で「貴社の要求には法的根拠がない」と一蹴する毅然とした回答書を送ることが最も効果的です。プロが出てきた時点で、彼らは「コスト対効果が悪い」と判断し、撤退することが多いからです。
もし侵害だった場合のリスクとお金の話(損害賠償・信用毀損)
もし裁判で「侵害」と認定されてしまった場合、具体的にどのようなペナルティが課されるのでしょうか。経営者が最も懸念する「お金」と「信用」のリスクについて具体的に解説します。
損害賠償額はどのように計算されるのか?
相手から「1億円払え」と言われても、法的にその金額がそのまま認められるわけではありません。商標法第38条では、損害賠償額の算定方法が規定されており、主に以下の3つの計算式のいずれかが用いられます。
3つの算定基準
一つ目は「譲渡数量に基づく計算」です。貴社が侵害商品を販売した個数に、相手方商品の1個あたりの利益額を掛け合わせた金額です。
二つ目は「侵害者の利益額」です。貴社がその商品で得た利益の全額を、相手方の損害とみなす考え方です。
三つ目は「ライセンス料相当額」です。仮に正規のライセンス契約を結んでいた場合に支払われるべき使用料相当額です。
実際の裁判や交渉では、これらの基準をベースに、侵害の期間や悪質性などを考慮して金額が増減されます。法外な請求額に対しては、これらの根拠を用いて減額交渉を行うことが可能です。
刑事罰や社会的信用のリスク(Amazonアカウント停止等)
金銭的な賠償以上に恐ろしいのが、ビジネス基盤の喪失です。
プラットフォームからの排除
Amazon、楽天、Googleなどのプラットフォームは、知的財産権の侵害に対して非常に厳しい措置を取ります。権利者からの申告に基づき、出品ページの削除や、最悪の場合はストアアカウントの永久停止(BAN)処分が下されることがあります。一度アカウントが停止されると、売上がゼロになるだけでなく、再開が極めて困難になるため、EC事業者にとっては死活問題です。
警告書が届いた段階で、プラットフォーム側に先手を打って事情を説明する、あるいは該当商品を一時的に非公開にするなどの自己防衛措置が求められます。また、極めて悪質な侵害(模倣品の販売など)の場合、商標法第78条に基づき、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金という刑事罰が科される可能性もゼロではありません。
出典: 商標法|e-Gov法令検索
逆の立場なら?「自社の商標がパクられた」場合の攻撃手順
ここまで「攻められた」側の対策を解説してきましたが、逆に貴社のブランドが他社に模倣された場合、どのように権利を行使すればよいのでしょうか。攻撃の手順を知ることは、防御の理解を深めることにも繋がります。
いきなり訴訟ではなく、まずは「警告書」を送付する意義
模倣品を見つけたからといって、いきなり裁判所に訴え出るのは一般的ではありません。費用と時間がかかりすぎるからです。まずは今回のテーマでもある「警告書」を内容証明郵便で送付します。
警告書の役割と効果
警告書を送ることで、相手に対して「権利侵害の事実」を通知し、故意(悪意)の状態を作り出します。これにより、それ以降の侵害行為に対する損害賠償請求が容易になります。また、多くの企業はトラブルを嫌うため、警告書を受け取った段階で販売を停止したり、ライセンス契約に応じたりするケースが大半です。警告書は、裁判を行わずに問題を解決するための、最もコストパフォーマンスの高い手段と言えます。
プラットフォーム(Amazon/Google)への削除申請フォーム活用
相手がECモールやSNS上で侵害行為を行っている場合、最も迅速で効果的な攻撃手段は、プラットフォームへの通報です。
知的財産権侵害申告のプロセス
Amazonの「知的財産権侵害についての申し立て」や、Googleの「著作権・商標権侵害による削除リクエスト」などの専用フォームを利用します。ここに、自社の商標登録番号と侵害しているURL等の証拠を入力して送信すると、プラットフォーム側が審査を行い、侵害が認められれば数日以内に該当ページが削除されます。これは相手の資金源を即座に断つ強力な手段であり、訴訟を待たずに被害を食い止める現代的な戦術です。
まとめ:商標トラブルは「時間」との勝負。専門家の知見を借りるべき理由
商標権侵害の警告書を受け取った際、最もリスクが高いのは「自己判断で放置すること」と「感情的に対応すること」です。商標法は専門的な解釈が必要な分野であり、初期対応のわずかなボタンの掛け違いが、後に取り返しのつかない損失を生むことがあります。
しかし、恐れる必要はありません。警告書はあくまでトラブルの「入り口」に過ぎず、適切な手順(事実確認、権利の精査、論理的な回答)を踏めば、多くのケースで事業存続可能な形での着地が見込めます。重要なのは、警告書が届いたその瞬間から「有事モード」に切り替え、スピード感を持って対応することです。
初動対応の重要性
警告書を受け取ったら、まずは冷静に内容を分析し、相手の商標権の有効性や自社の使用実態を確認してください。無視や感情的な対応は絶対に避け、事務的かつ戦略的に時間を稼ぐことが肝心です。
専門家への相談を躊躇しない
もし、自社だけで判断がつかない、あるいは相手が強硬な姿勢を見せている場合は、迷わず商標を専門とする弁理士や弁護士に相談してください。最初の相談料数万円を惜しんで、将来の数百万円、数千万円の損失を招くことのないよう、プロフェッショナルの知見を借りて、貴社の大切なブランドとビジネスを守り抜きましょう。




