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グローバル展開を見据えたロゴ制作と国際商標登録(マドプロ出願)の基礎実務

作成者: LogoPlus|Aug 12, 2026, 6:55:32 AM

海外進出で避けて通れない「商標の属地主義」とロゴ侵害リスク

なぜ日本の商標権だけでは海外で通用しないのか?(属地主義の原則)

商標権を理解する上で最も重要な基本原則の一つが、属地主義です。これは、商標権の効力はその国の法律に基づいて発生し、その国の領土内でのみ認められるという原則を指します。つまり、日本国内で特許庁から商標登録を認められ、強固な権利を保持していたとしても、アメリカや中国、欧州といった他国に一歩足を踏み入れれば、その権利は効力を持ちません。海外の市場においては、自社のロゴやブランド名が法的に無防備な状態、いわゆる権利空白のエリアになってしまうという厳しい現実を正しく認識する必要があります。

先行登録ブローカーの脅威とリブランディングの経済的損失

自社のロゴを海外で商標登録しないまま進出したり、ウェブサイトやSNSを通じて海外向けに露出を始めたりすると、極めて高いリスクが生じます。それは、現地の商標ブローカーと呼ばれる悪意のある第三者に、自社のロゴを先に登録されてしまうという脅威です。商標制度の多くは、最初に出願した者に権利を与える先願主義、すなわち早い者勝ちの原則を採用しています。そのため、出願の遅れがブランドの運命を左右することがあります。

もし他社に自社のロゴを押さえられてしまった場合、現地でのロゴ使用差止請求や製品の回収、さらには高額な和解金やライセンス料の請求を受ける可能性が考えられます。最悪の場合、それまで築き上げてきたブランド名やロゴのデザインを全て作り直さざるを得ない、リブランディングという多大な損失を被ることになります。これに伴う経済的・時間的コストは数十万円から数百万円規模に及ぶこともあり、海外進出そのものの断念に追い込まれるケースも少なくありません。

出典: 特許庁「【商標の国際出願】締約国一覧」

海外出願の2大ルート:「直接出願」と「マドプロ出願」の決定的な違い

各国直接出願ルートの特徴とコストの累積リスク

海外で商標権を取得する方法には、大きく分けて2つのルートが存在します。その一つが、進出を希望する国の特許庁へ、現地の特許事務所や代理人を介して個別に直接出願を行う、各国直接出願ルートです。このルートでは、国ごとに現地の言語で出願書類を作成する必要があり、さらに現地通貨を用いて個別に決済を行わなければなりません。

この方法の課題は、出願する国が増えるたびに手続きが非常に煩雑になる点にあります。また、それぞれの国で発生する現地代理人手数料が累積していくため、数カ国に出願するだけでも総コストが急激に跳ね上がるという経済的なリスクを伴います。

マドプロ出願(国際登録)ルートの仕組みと一元管理のメリット

もう一つのルートが、世界知的所有権機関(WIPO)が管理するマドリッド制度を利用した、マドプロ出願(国際登録ルート)です。この仕組みでは、日本の特許庁を窓口として、原則として英語という単一の言語、およびスイスフランという単一の通貨による一括納付を行うことで、複数の加盟国へ同時に出願を行うことが可能となります。

マドプロ出願は非常に合理的なシステムであり、権利を取得した後の維持管理においても大きなメリットがあります。例えば、将来的な商標の更新手続きや、会社の住所変更、名義人の変更といった手続きも、WIPOを通して一本化されたオンラインシステム上で管理できます。これにより、長期的な維持管理コストや実務の労力を大幅に抑えることが期待できます。

出典: 特許庁「マドリッド協定議定書による国際出願について(初めての方へ)」

マドプロ出願の実務手続き:5つのステップと「セントラルアタック」の罠

日本特許庁への「基礎出願・登録」から各国での保護認容までの流れ

マドプロ出願の手続きは、主に5つのステップに沿って進行します。

まずステップ1として、日本国内での基礎出願または登録が必要です。マドプロ出願を行うための前提条件として、日本国内で同一のロゴ商標がすでに出願中、あるいは登録完了している状態を維持している必要があります。

次にステップ2では、日本特許庁へ国際出願を行います。日本特許庁を受理官庁とし、WIPO宛ての英語の願書であるMM2願書を、専用のオンラインシステムなどを通じて提出します。

ステップ3では、WIPOによる方式審査と国際登録が行われます。提出された願書の記載内容や英語の表現に不備がないかという形式的な審査が行われ、問題がなければ国際登録簿に登録され、国際登録証が発行されます。

続いてステップ4として、各指定国での実体審査が行われます。WIPOから通知を受けた各指定国の特許庁が、自国の国内法に照らし合わせ、類似する商標の有無や識別力の有無について、およそ1年から1.5年ほどの期間をかけて実体審査を行います。

最後のステップ5で、保護の認容、すなわち審査完了となります。各指定国において拒絶の理由が見つからなければ審査を通過し、現地での商標権の効力である独占権が発生します。

出願から5年間の致命的リスク「セントラルアタック」とは

マドプロ出願には、非常に注意すべき特有のルールが存在します。それが、セントラルアタックと呼ばれる仕組みです。これは、国際登録日から5年以内に、日本国内にある基礎出願が拒絶査定になったり、あるいはすでに登録されていた国内商標が審判などによって取り消されたりした場合、海外の指定国全てにおけるマドプロ商標権も連動して消滅してしまうというリスクを指します。

このルールが存在するため、国内における最初のロゴ出願や、出願前の事前調査がいかに精密で盤石であるべきかが浮き彫りになります。国内での足元が揺らいでしまえば、海外で展開している全ての知財ネットワークが同時に失われてしまうため、事前のリスク管理が極めて重要になります。

出典: 特許庁「【商標の国際出願】よくある質問(国際登録の従属性)」

【2026年最新】マドプロ出願にかかる実費と手数料シミュレーション

日本特許庁へ支払う国内手数料の2026年改定ルール

マドプロ出願を実務として進める上で、費用構造の把握は欠かせません。まず、日本の特許庁に本国官庁として支払う国内手数料の手続きには、書面と電子の2種類の方法があります。

紙の書面を用いてMM2願書を郵送で提出する場合は、一律で9,000円の特許印紙が必要となります。一方で、2026年4月12日以降の最新の改定ルールにより、オンラインシステムであるマドリッド・イーファイリングを介して電子出願を行う場合、手数料が一律で45スイスフランに引き下げられました。改定前の54スイスフランから引き下げが適用されたことにより、最新の実務においてはオンラインでの電子出願がよりコストパフォーマンスに優れる選択肢となっています。

WIPO基本手数料の罠:カラー vs 白黒

WIPOへスイスフラン建てで支払う基本手数料(1区分・標準額)には、ロゴの色彩に関する重要なルールが存在します。

ロゴをカラー(色彩あり)で出願する場合の基本手数料は903スイスフランとなりますが、白黒(モノクロ)の商標として出願する場合は653スイスフランとなります。この2つの間には、250スイスフランの差額が生じます。

この費用の差を抑えるだけでなく、海外の多種多様な市場において様々な配色でロゴを柔軟に展開するためにも、海外出願を視野に入れたロゴは、最初の段階から白黒(モノクロやグレースケール)で出願および登録を行うことが、知財戦略における有益な実務上の工夫とされています。

マドプロ出願の支払総額を算出する公式と費用構造

マドプロ出願において、WIPOへ支払う総手数料の計算は、次の数式に沿って算出されます。

WIPOへの総支払額

= 基本手数料(白黒653 CHF / カラー903 CHF) + 指定国ごとの個別手数料の合計

つまり、WIPOへの総支払額は、ロゴの色によって決まる基本手数料(白黒653スイスフラン、カラー903スイスフラン)に、指定する国ごとの個別手数料を積み上げていくことで決まります。例えば、個別手数料を採用している米国(1区分あたり460スイスフラン)などを指定国に含める場合は、この金額が基本手数料に加算されていきます。指定する国の数が増えるほど、個別手数料の合計も増えていく点に注意が必要です。

具体的な費用シミュレーションとして、日本での出願を基礎とし、米国と中国の2カ国に対して1区分、かつ白黒のロゴで出願を行う場合の概算費用を以下の表に示します。

費用項目 支払先 金額の目安(日本円換算・為替レートによる) 概要・解説
日本特許庁窓口手数料 日本国特許庁 9,000円(書面) / 45 CHF(電子) 国内官庁経由で出願するための手数料
WIPO基本手数料 WIPO国際事務局 653 CHF(白黒商標の場合) カラー(903 CHF)より250 CHF割安
指定国個別手数料 各国の特許庁 各国規定額(米国:460 CHF / 1区分など) WIPOへスイスフラン建てで一括支払
日本側弁理士費用 国内特許事務所 約100,000円〜150,000円程度(出願代行) 英語願書の作成、事前調査、指定国管理
初期費用総額の目安 - 約25万〜35万円程度(1区分2カ国) 直接出願で個別の現地代理人を挟むより劇的に安い

 ※金額は改定されることがあるため、出願時に最新額をご確認ください。 

費用を最大1/2に抑える「INPIT外国出願補助金」の活用ノウハウ

中小企業やスタートアップ企業が海外展開を行う際、非常に強力な支援となる制度が、工業所有権情報・研修館(INPIT)による外国出願補助金です。この補助金を活用することで、マドプロ出願に必要となる実費、すなわちWIPOへの手数料や国別追加料金などに加え、国内の弁理士への代行手数料も含めた総額の最大2分の1、年間で上限300万円までの助成を受けることが可能となります。この支援制度を上手く組み入れることで、限られた予算の中でも海外での知財網を整えることが目指せます。

出典: 独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)「INPIT外国出願補助金」

グローバル市場で「審査を通過しやすいロゴ」を作るための知財・デザイン戦略

セントラルアタックを未然に防ぐ国内事前調査(クリアランス調査)の重要性

海外の各指定国で順調に権利を取得できたとしても、日本国内の基礎出願に不備が見つかり、後に取り消されてしまえば、連動してマドプロ出願のすべてが無効化されるセントラルアタックのリスクは常に存在します。そのため、海外展開を視野に入れたロゴデザインの制作においては、初期の段階から特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)などを活用した、精緻な先行商標調査が不可欠です。国内における類似商標の存在を徹底的にクリアにしておくことが、海外の知財戦略を守るための第一歩となります。

国際的に通用する「高い識別力」を持つロゴデザインの要件

単なる円や四角、星といった一般的な図形や、事業内容をそのまま説明するような記述的な文字だけで構成されたロゴは、国内外の特許庁において識別力がないと判断され、登録を拒絶される可能性が非常に高くなります。グローバル市場への進出に耐えうるブランドを育てるためには、自社ならではの独自性と創造性に溢れた、高い識別力を備えたロゴデザインを制作することが求められます。優れたデザインは、視覚的な美しさだけでなく、法的な保護を受けやすいという強みも併せ持っています。

出典: 特許庁「商標審査基準」

まとめ

海外への進出は、進出したその瞬間から現地での権利侵害や模倣といったリスクにさらされることになります。そのため、魅力的なロゴデザインを制作することと、それを守るための商標戦略、とりわけマドプロ出願の活用は、当初から一体のプロジェクトとして同時並行で進めるべき重要な施策です。

LOGOPLUSでは、グローバル市場において高い識別力を発揮する先進的なロゴデザインの構築から、セントラルアタックのリスクを未然に回避するための国内での精密な事前調査、さらにはマドプロ出願に必要な各種実務手続きまでをワンストップでサポートしています。未来のグローバルブランドへの第一歩を、知財とデザインの両面から強力に後押しいたします。海外展開を見据えたロゴ制作や商標についてのご相談は、ぜひLOGOPLUSへお任せください。

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